【そして響き渡った】AH2400 走行記録-05【破滅の音】
2018.09.16 Sun 05:50 -edit-
留萌において結局「毒食らわば皿まで」の心境で走行続行を決めはしましたが、この時の判断が正しかったのかどうか、正直なところ走り終わって一か月経過した今でも自分の中で結論が出せていません。
すべては「曲がりなりにも無事完走出来た」という結果があってのことであり、けれどもその完走自体は僥倖であったと言っても差し支えないので。
恐らくこの先、ブルべに限らず、また自転車に限らず何度も同じように続行か中断かの判断を迫られる場面に遭遇することが容易に予想できますが、今回のこの成功体験が却って自らの判断を曇らせる要因とならないよう心掛けていきたいものであると深く。
勿論今後様々なネタには使うでしょうけれどもそれはそれ、これはこれ。
何度見ても心臓が締め付けられるような思いになる。
この時は本当に”オレのAH2400はここまで。”と思ったもの。
不幸中の幸いと言って良いのか。
ここから1,100kmあまりを走り切れたことは色々な意味で財産になったとは思う。
【2018/08/14(火)】
サウナに寄る前、駅前のヨドバシで走行中水没して光らなくなったのでオンライン注文してあったCATEYEのリフレックスオートを受領。こんなことならモバブーも普通にこれで受け取れば良かったのだけれど、気付いた時には既にチコリンさんから購入済み連絡があった後なので仕方ない。
少々迷子になって、それでも無事サウナに到着してチェックイン。22時を少々回った頃。
リスタートを翌朝4時過ぎに設定し、入浴したり冷水浴槽でアイシングしたりマッサージを受けたりしてすっかりくつろぐ。が、あまりにくつろぎ過ぎてウェア類の洗濯と乾燥をしないまま寝落ちしてしまったので急遽リスタート時刻を遅らせることに。グロス15KPHではほぼマージンの無いオンタイムでリスタートすることにした。
ありがたいことに飲食に関しては24時間提供があるので洗濯の最中早朝からラーメンを頂いたりした。
朝食にカレー担々麺
ラーメンをすすりながら壁面に設置されているTVの天気予報画面を眺める。
北海道全域に終日傘のマーク。
正直ここでやめてしまおうかとも思った。気温低めで低湿な北海道の夏を自転車で漫喫したいと思ってエントリーしたというのに連日の雨では心を病みそう。
とはいえ生涯初のRM認定走を簡単に放り出す訳にも行かないので乾燥の済んだウェア類を回収、着替えてリスタート。
前夜PCですれ違い遭遇となったけーこ隊長は遭遇した時点で四時か五時頃出るようなことを言っていたはずなのでもう先に進んでいるだろうとか思いつつ。
雨の中リスタートするのはホント辛い。
都内より厳しいのではないかと思うくらいの信号峠だらけの札幌市を抜け石狩市に入り、道は海沿いへと向かう。
札幌市内のPC4が1,172km地点だったのでようやくそろそろ全行程の半分を消化しようかというところ。ごくごく当たり前の話ではあるが残り半分ってことは今までとおんなじ距離を更に走らなければならんってことで。
石狩川最下流の橋を渡る。
海沿いに出て、ひたすら日本海沿いを走る。
3、40kmに及ぶ無補給区間。まあ、さすがに随分慣れた。
幾つかのアップダウンを繰り返した後、ちょっとひらけた集落へ。
左手は海水浴場とキャンプ場があって、注意喚起の場内放送が流れるなかなか賑やかな場所。向かいにセコマがあったので立ち寄って休憩。後から複数の参加者も入って来た。
メロンソフトを食べ終えリスタートしようとしたところで台湾からの参加者ジェイソン(函館でイマイチ意思疎通ができなかった参加者だ。)が”チェーンオイル持ってる?”と聞いて来たのでバッグからチェーンルブを取り出して渡した。彼が注油し終わってチェーンルブを返しに来たところでわたしが先行リスタート。
道は再び緩やかに登り始め、ちょっと踏み込んだところで後輪にグネるような違和感があったので停止して後輪を確認してみたら案の定パンクだった。
お待ちかね、パンクのお時間です。・゜・(ノД`)・゜・。 pic.twitter.com/uY4ryKrb6e
— Trinity is 野に放たれたうまなみさん (@tri1021) 2018年8月14日
こんなことを呟きつつ(それでもここまで1,200kmあまりもノートラブルだったのだから重畳、重畳!)と、内心で自身を鼓舞。
ツィートを流したりしてからだったのでそれなりに時間を浪費しながらもチューブ交換を終え、さてリスタート!というタイミングでひとみさん通過、次いで”ヤッホー!”と声を掛けながらリュウさん通過、先ほどのセコマで確認したTLでは二人とも6時頃札幌をリスタートしていた。
丁度パンク対応が終わったばかりだったので二人の後ろを追う。
【さいたながわトレイン(五日目)】
※ただし一瞬
二人を追いつつパンク対応でホイールを外す際に最重にしていたギアを軽くしようとシフトチェンジしようとした瞬間
ガシャン!!
という金属音と共にペダルを踏む足が空転する感触。
(やっちまったか!?)と右後方をのぞき込むと案の定、リアディレイラーが本来あるべき場所とは全然違うところに挟まっていた。
まあ、それでもこんなこともあろーかと!と、今回はディレイラーハンガーを二個も携行していたのでひと手間かかってしまうのはアレとしても非常に軽い気持ちで自転車を路肩に寄せ、まずは折れたディレイラーハンガーを交換…と思ったところに飛び込んできた驚きの光景。
ハンガーではなく
折れたのはディレイラー本体。
万が一の際フレームやディレイラー本体の損傷を最小限に食い止めるためのバッファゾーンがディレイラーハンガーではないのか、そのハンガーが健在でディレイラー本体がもげるってどういうことよ!?
いやはや本当に混乱した。
事後に色々話を耳目にする限りではそう特別なアクシデントでもないらしいものの、だからと言ってもちろん頻繁に発生するアクシデントではない。じっさいこの状況をツィートしてみたら”こんなケース初めて見た!”という反応がかなり多かった。
しばし呆然としたのち我に返る。
(ハンガーではなくディレイラー本体がお釈迦になってしまったのだからさすがにこの先は続けられない。DNF連絡はもちろんのこと、まずはどうやって離脱するかを考えなければならん。)
ブルべカードに番号が記載されている主催のヨシダさんの携帯に連絡を入れ、状況を説明した後DNFすることを伝える。
”大丈夫?回収車回せたら回そうか?”
”一時間くらい前にヤマグチさんが追い越して行ったから結構先にいらっしゃると思います。かなり戻ることになるから厳しいんじゃないかと。”
”ホントに辞めちゃうの?何とか走れない?”
”ハンガーじゃなくてディレイラー本体ですからねえ。”
内心忸怩たる思いで電話を切った。
初エントリーのRM認定走で既に1,200kmを越える距離を走れているのに、気力も体力も充分残っているのにやめなければならないのがただひたすら悲しかった。悔しかったのではない、悲しかったのだ。
それでもひとまずはエスケープ可能なところまで移動しなければならない。最寄りの鉄道駅は約50km北の留萌だったが先ほど通過した海水浴場まで戻れたら内陸の滝川に向かう路線バスでもあるのではないかと考えた。荷物の中には平底でかさばらないスリップオンタイプのシューズがあるので履き替えて押し歩いても良いけれど、できれば自走できるように応急処置を施して留萌まで走りたいところ。
チェーンを切ってRDを取り外してチェーンを詰めて繋ぎ直し、シングル直結として走行するのは既に昨年のブルべで経験済みで、問題点や注意点もそれなりに頭に入っている。やはり経験はひとの行動に余裕を与えてくれる。
その際のことが念頭にあったので今回はチェーンのコネクトピン、チェーンを繋ぐ際に使用するチェーンフックも携行していてこれが非常に役立った。
備えあれば憂いなし
とはいえこれらは大した重量でもないので出来れば無駄な斤量となって欲しかった。
作業をしていると、先ほど前方を走っていて音を聞きつけたらしいリュウさんが引き返してきた。後方からはコウモリさんが追いついて来て三人で少々やりとり。
リュウ:チェーン切って繋いで走り切りますか。
わたし:さすがに残り1,200もあったら無理でしょ、去年R東京の400で直結したらたった300kmの間にチェーン切れまくりましたもん。おとなしく留萌でエスケープしますよ。
リュウ:確かに留萌から先で走れなくなったらキツイよなあ。
コウモリ:この先登りがきついところ知床峠しかないよ?
わたし:稚内もまだなのに知床の心配なんかできないですよ。。。
リュウ:じゃあ、ひとみさんに先行してもらっているので追い掛けます。MTBでやった経験上チェーンはまっすぐになるようにした方が良いですよ。
わたし:そうそう、それ去年痛いほど身に沁みた。
そんなこんなで二人が去り、作業継続。
フロントはインナーにしてリアは真ん中付近なので前34の後ろは良く見なかったけれど17くらいか。概ねフレーム芯からの離隔寸法を前後合わせてやらないと酷い目に遭うのは経験済み。
取り敢えず走れる(ように見える)状態にはなった。
恐る恐るペダルを踏む。
(あれ?)
想像していた以上にすんなり走る。
(これなら留萌どころか稚内も行けるんじゃね?)
そんな感じ。
しばらく走った先の白銀の滝。
走行に不安があまりないので景色を愛でる余裕もできた。
慌ててヨシダさんに電話。
”何度もすみません、先ほどのDNFを取り下げさせてもらえますか。ひとまず留萌までは行けそうなので、そこまで走ってみてから以後のことをもう一度考えます。”
”おお、走るの?やっぱり走るよね。行けるところまでは行っちゃうよね。そう来なくっちゃね!”
意外と(?)無茶振りする人である。
Twitterで複数の方から留萌の自転車ショップに関しての情報をお寄せいただき、自分でも調べて見つけたそのお店二軒に連絡してみたものの一軒は電話に応答が無く、もう一軒は店舗改修工事に伴い休業中とのこと。この先もお盆休み期間中なのでショップでパーツを調達するのは望み薄な感じ。
緩やかなアップダウンの繰り返しの後留萌の中心部に到着。
留萌駅付近。
ここでしばし躊躇。
予定通り留萌駅から輪行エスケープするのかそれともこのまま継続するのか。去年の経験に照らすとそろそろチェーンが不具合を起こしてもおかしくないというタイミングはとうに過ぎても走行に支障が無い。こうなったらホントに行けるところまで行ってしまえ!という感覚で先に進んだ。
コース自体にはゴールが設定されていて、ゴールに辿り着いたらAH2400は終了となるのだから当然ながら「行けるところまで=ゴール地点」である。
そんなこちらの心の内を見透かしたようにひとみさんから”増毛の7-11で休憩してるよ~。”と連絡が入ったのは増毛の街に差し掛かるちょい手前。
お店に入ったら丁度二人がイートインで食事中。
”折角増毛に来たんだからちょっと海鮮モノでも食べに行ってきます!”
と、増毛の街に行ってみたは良いけれど、どこもかしこも満席で最低でも3、40分待ちと言われてしまってすごすごと引き返し、サンドイッチとアイスラテで空腹を満たしていたら”お昼食べたのにまだ食べるなんて食欲旺盛だなあって思った。”
というひとみさんのありがたきお言葉。
いや、ほんの15分くらいしか経っていないのに何を食ってきたと思ったのですか。。。
増毛の街並み。
因みに「風待ち食堂」というのは食堂ではなく、映画に使われたセット(?)を再現しているお土産等の雑貨屋さんである。
【さいたながわトレイン
(五日目-Act.2)】
そこそこ風が強い中をじわじわ進む。
途中、ストレッチ休憩なんぞを挟みつつ。
ひとみ:ダメだわ、やっぱりリンパの流れが詰まっている感じする。
リュウ:え?ひとみさんの身体の中にりんぱぱ詰まっているの?
わたし:ゴールしたらりんぱぱマッサージ要りますね!(笑)
ひとみ:どんなマッサージよ!勘弁して!
南の方と違ってこの辺はアップダウンがほとんどないので走っても走っても景色が代わり映えしないというのはなかなかしんどい。
それでも人の手が加わっていない風景というのはなかなか心に迫るものがある。
うっすらと利尻富士の姿も。
旗に描かれたクマのとぼけた愛らしさと対照的にリアルで凶悪な風体の「苫前ベアー」のオブジェの落差。
そしていよいよ羽幌町。
昨年、某忘年会で”2400なんか絶対すぐ埋まることなんかあり得ませんから!”と豪語していて、その言葉を信じてエントリー開始翌日なんかにのんびりポチろうと考えたらひどい目に遭わされていたに違いないという言葉の主であるR札幌スタッフタナカさんの住まう町である。叶うならば直接顔を見て文句を言いたいところだったけれど生憎お仕事でこの地を離れておいでらしい。
そして何故かペンギンのオブジェ…ではなくウミガラスである。
PCであるコンビニの駐車場に進入しようとしたとき、段差に乗り上げた勢いでひとみさんが何かを落として自分で踏みそうになったところを辛うじて回避して停止。
後続のわたしが拾い上げたそれは一本のバナナだった。
ひとみ:いやあ、思わずマリオカートみたいにバナナの皮で滑っちゃうところだったわ。
わたし:マリカーでバナナの皮投げて自分で滑るってあり得ないんじゃ?
ひとみ:そういえばそうよね(笑)
そんな微笑ましい会話。
PC5 7-11羽幌役場前
(1354.6km)2018/08/14/18時頃
チェーンは今のところもの凄く頑張ってくれているけれど、まだ残りは1,000㎞以上ある。
稚内の宿を押さえている二人と別れ、わたしは単独で羽幌の温泉施設へ。
ここは道の駅兼宿泊施設でもあり、日帰り入浴は22時まで利用可能だし畳敷きの大広間があって横になれるし何よりコインランドリーがあったので非常にありがたかった。
入浴してさっぱりした後洗濯物を洗濯機に放り込んで畳の上で仮眠。
途中タイマーで目覚めて洗濯物を乾燥機に入れたりしたもののそこそこ休めてリフレッシュできたので22時の外来入浴終了と同時にリスタート。出てすぐのところにコインランドリーがあったので立ち寄ってシューズの乾燥を済ませてから改めてリスタート。
ところが折角シューズの乾燥までしたのに雨がぽつぽつ降り始め、次第に雨脚が強まって来たので近くにあったバス停に避難して雨宿り。
レーダー画面を確認したらそう時間が経たないうちに雨が上がりそうだったのでタイマーをセットしてしばらく仮眠して雨雲をやり過ごすことに。
(AH2400走行記録-06へ続く)
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この記事に対するコメント
そーいえば私もRD巻き込んで壊したことありました。 もげたRDがガッツリスポークとチェーンステーの間に挟まって、後輪ロックした状態なので押し歩きもできず、自転車の後ろを抱えて前輪だけ転がして数キロ歩いて川奈の駅へ。(逗子200でした)
倒したとか何かの拍子にハンガーが曲がったようで、それがそもそもの巻き込みの原因だったみたい。
しかしまぁ、シングル化してよくぞゴールしたもんだ。
この先何があっても、『あの状態からゴールした』というのがいろんな意味での指針になりそう。 結果オーライと言われようともゴールしたんだからいいのです!! ダメ元でもやってみることが大事。
倒したとか何かの拍子にハンガーが曲がったようで、それがそもそもの巻き込みの原因だったみたい。
しかしまぁ、シングル化してよくぞゴールしたもんだ。
この先何があっても、『あの状態からゴールした』というのがいろんな意味での指針になりそう。 結果オーライと言われようともゴールしたんだからいいのです!! ダメ元でもやってみることが大事。
URL | けーこ #81/lD5GQ
2018/09/18 18:51 * 編集 *
> けーこ隊長
今回はねえディレイラーハンガーは二個あるしスポークも三本あるし、これ以上ないくらいに万全の態勢で臨んだにも関わらず、やはりアクシデントは想像の斜め上を行ってしまう訳で。
輪行で歪みが蓄積されてしまうこともあるし、ディレイラーハンガーはほんといつ破損してもおかしくないと覚悟してはいたのですがまさかのRD。
色々考えるきっかけになったし経験という意味ではこれ以上ない出来事ですし、先々笑い話にもできるし万能なエピソードではありますね。
ゴールできたからこその笑い話。
とはいえこの先も走れるようなら走っちゃうだろうなあと(笑)
URL | 管理(?)人。@新職場 #bi94IFRw
2018/09/19 08:56 * 編集 *
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