【ある意味】オトナの社会科見学 #05【鉄分補給】
2021.11.29 Mon 22:54 -edit-
石炭積載トロッコ用の軌道が描く
なまめかしい曲線
当時はこの軌道上を炭車が往来していた
立坑櫓建屋、トロッコ操車場に足を踏み入れるとまず視界に飛び込んで来たのはトロッコのレール。建屋内の気温は-2℃。

都合6線の軌道が二つにまとまる
※作業員運搬用トロッコ引き込み線を勘定に入れたら8線(11/30 追記)
立坑を上下するケージが四つあってその各々に炭車が乗るのでケージから出て来るラインが四つ、石炭を積んだ炭車が軌道端部のストッパーにぶつかり跳ね返されて大外のラインで立坑の向こう側にある石炭回収エリアに走って行き、空荷になった炭車が再びケージに入るので立坑の反対側にも同じようにケージに向かう4線と立坑の外側を通る2線がある。
(※当たり前のように断言しているものの、ガイドさんの説明をメモも取らずに聞いただけのあやふやな記憶に基づく記述なのでもしかしたら思いっきり的外れかも知れないので以後も割り引いてお読みいただきますよう。)
これが石炭を積んだ炭車を跳ね返す

こちらは人員運搬用のトロッコ車輛
ガイド役のボランティアスタッフさんは元従業員(炭鉱夫)で救護班所属経験もあるというベテランさん。
満載の炭車は画面奥の方で石炭を回収され空車になって戻る
立坑櫓を見上げる
2階部分の立坑ケージ管理区域に登る。
ケージの昇降は『ケーペ方式』で運用されていた
ドイツで開発された方式でひと組のワイヤーに二つのケージが取り付けられていて片方が地上に上がる時もう片方が底部にあるという『井戸のつるべ方式』で上昇・下降速度は最大12m/s、現代の一般的なマンションで30~60m/minなので秒速に直せば0.5~1m/sだということを考えると恐ろしく速い。
将来的な拡張を見込んで設計上1,000mの深度まで対応可能な性能を誇っていたものの、最終的にはその半分ほどの深さまでしか活用されなかった。
「それでも立坑ケージでの事故は閉山するまで一度も無かったんですよ。」ガイドさんが誇らしげにそう語った。
ケーペ方式のワイヤーの回転軸となる直径5mを越えるドラム(滑車)。
大型のワイヤードラムとブレーキ
摩擦力で制動する仕組みは自動車や自転車のブレーキと同じ原理。
この規模の鉄塊を高い精度で加工するのはやはり造船技術
ブレーキ調整用のアホみたいなサイズのナットとスパナ
さすがに手で扱えないのでハンマーでひっぱたいて使ったのだとか。比較的小さなスパナでもわたしが普段扱うサイズを優に超える。
立坑ケージの制御室。
カレンダーは閉山された平成六年のものが残されている
制御エリアの天井走行クレーン
こちらは巻き上げモーター
制御室フロアから1階部分を眺める
いずこの職場も同じような感じである
当時の労働環境から社会情勢に至るまで、カイドさんの話の内容は多岐にわたる。為替の固定相場制から変動相場制への移行に伴って輸入炭と国産炭の価格差が開くようになり、露天掘りの輸入炭と比較して地下坑道から掘り出す国産炭とでは価格が三倍にも開くことになり、集約による規模拡大策により生産性が高まったものの単に延命措置にしかならず、価格競争力はじわじわ失われて行き最終的には国産炭鉱全面閉山ということになったといういきさつ。
実は建前上『本邦の炭鉱は全て閉山された』とされているものの釧路コールマインという炭鉱は今でも稼働していて年200万tほど算出しているが、あくまでも『研修施設』という位置付けなので炭鉱としてはカウントされていないという裏事情も。この辺は商業捕鯨と調査捕鯨の相違みたいなニュアンスの差というか言葉の綾があるような感じ。
再び階下に。
ツアーガイドさんに「ゆっくり写真撮って回って良いですよ~。」と言われたので厚かましくお言葉に甘える。
魅惑の曲線と切替ポイント
最後にひと通り全体を撮らせていただいた
立坑櫓トロッコ操車場見学終了
これにて見学ツアー前半戦終了となるので一旦センター建物内に戻り、ヘルメットの返却。
後半は各自の車で数百メートル離れた『自走枠整備工場(跡)』へと移動する。
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